2024.12.03
実績など
公益財団法人ソフトピアジャパンの「デジタル化」推進計画(vol.5)
vol.5:公益財団法人におけるBCP対策としてのテレワーク実証 ~事業継続を見据えた働き方~
皆さんこんにちは、公益財団法人ソフトピアジャパンの広報担当です。
第5弾となる今回は、公益財団法人ソフトピアジャパン(以下 財団)の「デジタル化」の取り組みの一つとしてテレワークの実証についてご紹介していきます。
前回の記事では、クラウドPBXの導入についての取り組み記事をご紹介しました。
◆vol.4:クラウドPBXで変わるビジネスコミュニケーション ~財団の未来を見据えたクラウドPBX導入~
それ以前の記事は以下のリンクからご確認いただけます。
◆vol.1:デジタル化への第一歩 ~財団の業務分析と企業DBプロトタイプ試作調査~◆vol.2:デジタル化の舞台裏 ~職員が語る財団の変革~◆vol.3:企業データベース導入の課題と対策 ~課題編~◆R5まとめ:「デジタル化」推進計画 ~ 令和5年度のまとめ ~
今回の記事では、BCPの一環として取り組んでいるテレワークの実証について紹介します。また、実証に参加した職員のインタビュー記事もありますので、合わせてお読みください。
テレワーク実施者のインタビュー記事については下記リンクからご覧ください。
▶公益財団法人におけるBCP対策としてのテレワーク実証 ~事業継続を見据えた働き方~(テレワーク実施者インタビュー編)
「テレワーク実証の目的と結果」についての記事は本ページでご覧いただけます。
事業の継続性を確保するためのBCP(事業継続計画)対策の手段の一つに、テレワークによる勤務や業務の実施が考えられます。特に、現代の働き方やビジネス環境の変化がこの取り組みに大きく影響しています。自然災害や感染症の拡大により、社会的・経済的なリスクが増加しており、こうしたリスクに備え、職員がオフィスに出勤できない、もしくは集合が難しい状況にも対応する必要性が高まっています。
このような背景から、テレワークでは職員が自宅等の職場以外の場所から業務を続行できるため、事業の中断を最小限に抑える手段として有効と考えられます。さらに、テレワークは職員の働き方の多様化に対応し、時間的な効率向上(通勤時間の削減)や業務集中時間の増加による生産性向上も見込めると考えられます。
財団では、これらの背景と財団規則に基づいたテレワーク実証に取り組みました。以下に具体的な取り組み内容を紹介します。
【目指すもの】
・緊急時に迅速にテレワークへ移行できる体制の整備
・承認・決裁を含む業務をデジタルツールで効率化
・平時と同等の業務パフォーマンスを維持
1.外部との電話連絡の課題
従来の電話システムがオフィス内での利用を前提としていたため、職員が自宅から外部と直接電話連絡を取る手段が
限られており、これが原因でテレワーク時に外部との連絡がスムーズに行えず、業務が滞る状況が生じていた。
個人の携帯電話やスマートフォンで、外部との連絡を躊躇する場合もあった。
2.紙ベースの承認プロセスの問題
紙でしか承認できないため、リモートワークが不可能な職員が存在した。
特に決裁者は、紙の承認書類を確認・押印する必要があったため、出勤を余儀なくされていた。
承認や意思決定のプロセスが紙のやり取りに依存し、リモートでの業務遂行が困難な状況を招いていた。
3.出退勤管理の不透明さ
出退勤の管理はチャットツールを用いた報告形式で行われていたが、勤務時間の記録にばらつきが生じていた。
そのため、管理者が出退勤状況を把握しづらく、勤務時間の正確な確認に手間がかかることがあった。
4.テレワーク作業状況の把握不足
日中の作業内容の進捗確認が困難であったため、チャットツールやメールを使用して職員に定期的な報告を求める形で対応してい
た。しかし、これらの方法では状況把握や作業進捗の詳細な確認が難しく、管理者側にとって負担が大きいという課題が残った。
5.連絡・会議の即時性不足
職員間の会議についても、Web会議ツールの設定や参加者の招集に手間がかかり、さらに事前にチャットツールや電話による
時間調整が必要だった。
6.ネットワーク環境の課題
財団内部サーバへのアクセスは、IPAの「シン・テレワークシステム」のリモート接続を利用していたが、自宅のネットワーク環境
や個人スマートフォンを活用せざるを得ない職員がいたため、財団が安定した接続環境を提供する必要があった。
また、セキュリティーの観点からも、安全なネットワーク接続を確保することが求められた。
外部と連絡が取れる仕組みを構築。
【結果】テレワーク環境下でも外部との電話連絡が会社から貸与されたスマートフォンで行えるようになり、
企業との連絡がスムーズに行われ、業務の進行が妨げられることなく、対応できるようになった。
【結果】承認業務の一部をデジタル化することで、リモートでも承認が可能になった。
【結果】勤務時間や出退勤状況を把握可能となり、管理者は職員の勤務状況を正確に把握できるようになった。
※SS1クラウドはセキュリティ対策の一つで、作業中のアクティビティやログイン状況を記録し、
管理者が業務の進捗状況を把握することができ、詳細なレポートの生成が可能なツールです。
【結果】業務進捗を把握するための確認作業が効率化された。
取れる環境を整備したことにより、テレワーク環境下におけるコミュニケーションの円滑化を実証。
【結果】Gatherにより、連絡や会議を即座に開始できる環境が整備され、職員間の連携が強化された。
リモート接続できる選択肢を提供。
【結果】ネットワークのセキュリティや通信の安定性、費用に対する懸念が解消され、安定したリモート環境が実現した。
実証事業を通じて、緊急時にも業務を継続できる可能性があること、また今回実施した環境や体制が有効であることが確認されました。また、実施者へのインタビューを通じて以下の意見も得られました。
【実施者の生産性評価】
テレワーク環境下でも出勤時と同等の業務遂行が可能であることが確認された。
【実施者の満足度】
テレワーク環境に対する実施者の満足度は、5段階評価で4という全体的に高い結果となった。(実施者インタビュー記事より)
特に、テレワークでも業務が滞りなく進められたこと、紙ベースのプロセスが一部デジタル化されたことで承認作業がスムーズに
なったこと、さらに、バーチャルオフィスツールの活用によって、職員同士のコミュニケーションが円滑に行えた点が評価された。
【改善提案の収集】
改善点としては、ネットワーク障害への対策として回線の冗長化や予備ネットワークの整備、全職員の緊急時対応や
テレワーク訓練の実施などが挙げられた。
より詳細な情報については、下記実施者インタビュー記事をご参照ください。
▶公益財団法人ソフトピアジャパンの「デジタル化」推進計画(vol.5)実施者インタビュー
テレワーク下でも業務が滞りなく遂行できたことから、BCP対策として業務の継続性が十分に保てると判断できた。
・財団貸与のスマートフォンによるテザリング接続により、自宅ネットワーク環境への接続に対する不安を解消するとともに、
セキュリティ面の懸念にも対応した。
1.紙ベースの承認プロセスの完全デジタル化
複数名が長期間のテレワークにも対応可能な体制の整備。
2.テレワーク経験値の共有と教育
実証結果を他部署に展開し、組織全体でBCP対策としての意識とスキル向上を図る。
3.セキュリティ強化
データの暗号化とアクセス権限の厳格な管理を実施し、テレワーク時の情報漏洩やサイバー攻撃のリスクを低減し、
安全性を向上させる。
従来、財団では出退勤の打刻管理が導入されておらず、コロナ禍においてリモート勤務の増加に伴い、正確な出退勤の把握が課題となっていました。職員が出勤状況を手軽に記録し、管理者がログを活用して勤務時間を管理できるツールの必要性が高まりました。こうした背景から、職員がPower Appsを使用してデジタル打刻管理アプリを試作しました。
このアプリにより、職員が簡単に出勤・退勤の打刻を行い、管理者もリアルタイムで出退勤ログを確認できるようになり、テレワーク環境下でも効率的な出退勤管理が実現しました。
財団では、事業系の承認フローが紙ベースで行われていたため、コロナ禍で承認作業が滞ることが課題となりました。一方、経理系の承認はすでにデジタル化が進んでいたため、事業系の承認プロセスもデジタル化し、効率化する必要がありました。紙による承認作業がリモート環境での業務推進を阻む要因となっていたことから、迅速でシームレスな承認フローの構築が求められていました。
この課題を解決するため、今回の実証にあたり、TeamsとPower Appsを組み合わせたデジタル承認フローを試作しました。
1.職員がPower Appsを使って承認申請を作成します。申請内容には、必要な情報および添付ファイルが含まれます。
2.申請が完了すると、自動的にTeamsに通知が送信され、承認者にアラートが届きます。
3.承認者はTeams内で通知を確認し、リンクをクリックしてPower Appsの承認画面にアクセスします。
ここで、申請内容を確認し、必要に応じてコメントを追加します。
4.承認または却下のボタンをクリックするだけで、簡単に承認プロセスを完了できます。
このシステムにより、職員はPower Appsで承認申請を簡単に作成し、承認者はTeams内で通知を受けてワンクリックで内容を確認・承認できるようになっています。このデジタル承認フローにより、紙の承認に比べて迅速かつ効率的な承認作業が可能となり、テレワーク環境下でも業務の停滞を防ぐことができました。
コロナ禍のテレワークでは、チャットツールとWeb会議ツールのみを使用していましたが、リアルタイムな意思疎通が難しく、コミュニケーションに苦労していました。その際、会話を始める前にまずチャットで相手の対応可能状況を確認し、Web会議ツールを立ち上げる必要があり、迅速なやり取りができないことが課題でした。
この課題を解決するため、今回はバーチャルオフィスツール「Gather」を導入しました。Gatherを選んだ理由としては、職員同士が現実のオフィスに近い感覚でテレワークを行い、スムーズな連携が取れる環境を整えるためです。具体的には、アバターを用いて仮想オフィス内を自由に移動でき、会議室や打合せスペースに集まると自動的に音声やビデオが接続され、チャットだけでなく口頭でのリアルタイムなコミュニケーションが可能になります。また、アバターの位置により、視覚的に相手の対応可能状況が一目でわかり、アバターを移動させるだけで会議を開始できるため、「話しかける」感覚でのやり取りが実現できました。
さらに、Gatherは直感的に操作ができ、他のツールとの相性も良く、職員の操作経験があったためスムーズに導入できました。また、画面共有機能や仮想ホワイトボードを活用して、資料の共有やアイデアの整理も容易に行え、テレワーク環境でも臨場感のある打ち合わせが可能であることが確認されました。
この実証により、バーチャルオフィスを通じてコミュニケーションの効果が向上し、テレワーク下でも業務が円滑に進められる環境ということが分かりました。
今回は、テレワーク実証についてお話しましたが、この実証を通じて、BCP対策としてのメリットと課題が明らかになりました。
【メリット】
・離れた場所でも業務を継続できる体制の構築
・緊急時や災害発生時に、迅速にテレワークへ切り替えることが可能
・リモート承認やデジタルツールの活用により、業務の効率化と継続性の確保
・移動時間の削減により、即座に業務へ集中できる環境の提供
【課題】
・モバイル環境では、安定した業務遂行が難しい場合がある
・紙による請求書の受領など、一部の手続きや業務が紙ベースで行われており、完全なリモート環境の実現が課題
・通信環境に依存するため、ネットワーク障害時には業務が中断するリスク
・電源やネットワーク環境が確保できない状況では業務が困難
・1ヵ月以上の長期間にわたるテレワークの実証
【BCP対応策】
・事業継続に必要なモバイルデバイスやネットワーク環境の使用ルールを策定し、事業や期間別に最低限必要な
人員や業務の洗い出しとルールの明確化
・紙ベース業務をデジタル化し、リモート環境での業務遂行を可能にする
・予備回線の確保や回線冗長化を含むネットワークの強化策を導入する
・電源やネットワーク環境が確保できない場合の対応策や緊急時の手順の明確化
テレワークの導入により、BCP対策として、職員が安全に業務を継続できる環境が整備され、業務の効率化と生産性向上に大きく寄与しています。しかし、ネットワーク環境への依存や、一部の業務プロセスのデジタル化不足など、課題も依然として残っています。
これらの課題に対応することで、BCP対策としてのテレワークの効果をさらに高めることが求められます。特に、ネットワークの強化や紙ベースの業務プロセスのデジタル化を進めることで、事業継続性を確保し、より柔軟で持続可能な働き方を推進していきます。
今後も、工夫しながら課題に取り組み、持続可能な運営を目指し、デジタル化の推進に取り組んでいきます。